2012年10月23日
第7回 『100gのキモチ』
「100gのキモチ」というワークショップを2008年から始めた。たった100gの土玉から、どれだけヴァリエーションが出せるか、やってみようという試みだ。自分一人で作り始めたら、全部同じ100gからできているように見えないし、手に持つと、重さすら違う感じがする。これは、他の人にもやってもらおう!と2008年10月に松本のギャルリ灰月で最初のワークショップを行った。
ちょうど、陶芸を始めて20年目。
私は登呂博物館の協議員をしていて、山梨県立博物館を訪ねた。まず、縄文式土器…皆さんご存知のうねうね、メラメラしたヤツ。学芸員さんがひと際、個性の強い鉢を指して、「これからイメージしたダンスを夏休みの自由研究にした小学生がいます!」と。んーっ、確かにそんなこともあろーよ。そして、弥生時代の展示コーナーへ。
「え?無印?」
あっさり。なに、コレ?
「なんでこんなに、急に変わったんですか?」と学芸さんに尋ねると、「社会が変わったんです。食べ物を求めて、狩猟生活をしていた縄文時代に、自然は恐ろしいものだったから、モチーフも炎や自然のものが多い。弥生になると、稲作が始まって、定住する。社会ができたんですよ。」小学校で習ったとき、うねうね縄文+すらっと弥生、形だけを覚えたけれど、今、土を業(なりわい)とする私は、違う見方をする。
縄文土器(左)は、まず弥生式(右)のように原型の鉢を作ってから、土ひもで装飾。かかる時間も2倍以上。考古学者にとって、焼き物はその社会を最も反映するものだそう。今の時代に、私ができることはなんだろう。
ワークショップで、私は作り方の技術指導はしない。土は、どんなコトが得意で、どんなことが苦手か、そういう話だけをする。作品は、参加者と土との対話の形。
「ねぇ、これ大丈夫?」
「だめ、ムリ。」となれば、土はひびが入るし、形も保てない。お互いの性格を知ることが大切。ある時、40代の女性が参加した。土はなかなか彼女の思うようにならず、イライラして私に100gの土を押しつけて来た。「もっと少しずつ、こっちへ向いてくれる?とやれば、できます。土の言うコトを聞いてみて下さい。」30分もしたら、彼女はずいぶん穏やかになっていて、「うちの子、ちゃんと焼いて下さいね」、と(笑)。
→2010年「100gのキモチ展」
昨年(2011年)11月4日、オランダでもこのワークショップを行った。アーティスト・イン・レジデンスで使用していた私のスタジオに集まったのは、17歳~65歳までの10名。そして、先週10月17日には、ccc静岡市クリエーター支援センターの協力で、シンガポールから来静したアートスクールの学生(14~16歳)12人と講師のアーティスト2人とともに、ワークショップ『100g clay_100 feelings』を行った。
同じものは、二度とできない。同じひとが同じ100gを持っても、次は全然ちがうものができるだろう。
さて、来週は彼女たちの作品を焼いて、シンガポールへ送らなくちゃ。
オランダでのワークショップの様子(上)と参加者作品(下)。
このときは、ロールピンがなくて、ビールの空き瓶を使って、土を伸したワ(笑)
17歳のYvonneが休憩もとらずに、熱心にやっていたのが印象的だった
シンガポールの学生さんたちに向けたレクチャーの様子。
登呂の土をその場でこねて、粘土にして見せたら、学生さん驚愕!
「土って袋で、買うもんだと思ってた!」
※「いつだって、旅の途中。」 はこの第7回が最終回です。
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◆ほかの回のコラムを読む
第1回 ベルギー・オランダ、ビールの旅
第2回 おそれ入ります、お庭ちゃん。
第3回 今さらながら、自己紹介
第4回 土がわたしにくれたもの
第5回 よそもの視点、旅人目線
第6回 すべてのわざには時がある
第7回 『100gのキモチ』 (最終回)
ちょうど、陶芸を始めて20年目。
私は登呂博物館の協議員をしていて、山梨県立博物館を訪ねた。まず、縄文式土器…皆さんご存知のうねうね、メラメラしたヤツ。学芸員さんがひと際、個性の強い鉢を指して、「これからイメージしたダンスを夏休みの自由研究にした小学生がいます!」と。んーっ、確かにそんなこともあろーよ。そして、弥生時代の展示コーナーへ。
「え?無印?」
あっさり。なに、コレ?
「なんでこんなに、急に変わったんですか?」と学芸さんに尋ねると、「社会が変わったんです。食べ物を求めて、狩猟生活をしていた縄文時代に、自然は恐ろしいものだったから、モチーフも炎や自然のものが多い。弥生になると、稲作が始まって、定住する。社会ができたんですよ。」小学校で習ったとき、うねうね縄文+すらっと弥生、形だけを覚えたけれど、今、土を業(なりわい)とする私は、違う見方をする。
縄文土器(左)は、まず弥生式(右)のように原型の鉢を作ってから、土ひもで装飾。かかる時間も2倍以上。考古学者にとって、焼き物はその社会を最も反映するものだそう。今の時代に、私ができることはなんだろう。
ワークショップで、私は作り方の技術指導はしない。土は、どんなコトが得意で、どんなことが苦手か、そういう話だけをする。作品は、参加者と土との対話の形。
「ねぇ、これ大丈夫?」
「だめ、ムリ。」となれば、土はひびが入るし、形も保てない。お互いの性格を知ることが大切。ある時、40代の女性が参加した。土はなかなか彼女の思うようにならず、イライラして私に100gの土を押しつけて来た。「もっと少しずつ、こっちへ向いてくれる?とやれば、できます。土の言うコトを聞いてみて下さい。」30分もしたら、彼女はずいぶん穏やかになっていて、「うちの子、ちゃんと焼いて下さいね」、と(笑)。
→2010年「100gのキモチ展」
昨年(2011年)11月4日、オランダでもこのワークショップを行った。アーティスト・イン・レジデンスで使用していた私のスタジオに集まったのは、17歳~65歳までの10名。そして、先週10月17日には、ccc静岡市クリエーター支援センターの協力で、シンガポールから来静したアートスクールの学生(14~16歳)12人と講師のアーティスト2人とともに、ワークショップ『100g clay_100 feelings』を行った。
同じものは、二度とできない。同じひとが同じ100gを持っても、次は全然ちがうものができるだろう。
さて、来週は彼女たちの作品を焼いて、シンガポールへ送らなくちゃ。
オランダでのワークショップの様子(上)と参加者作品(下)。
このときは、ロールピンがなくて、ビールの空き瓶を使って、土を伸したワ(笑)
17歳のYvonneが休憩もとらずに、熱心にやっていたのが印象的だった
シンガポールの学生さんたちに向けたレクチャーの様子。
登呂の土をその場でこねて、粘土にして見せたら、学生さん驚愕!
「土って袋で、買うもんだと思ってた!」
※「いつだって、旅の途中。」 はこの第7回が最終回です。
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◆ほかの回のコラムを読む
第1回 ベルギー・オランダ、ビールの旅
第2回 おそれ入ります、お庭ちゃん。
第3回 今さらながら、自己紹介
第4回 土がわたしにくれたもの
第5回 よそもの視点、旅人目線
第6回 すべてのわざには時がある
第7回 『100gのキモチ』 (最終回)
Posted by eしずおかコラム at 12:00