2012年09月25日
第5回 よそもの視点、旅人目線
2泊3日で石川県は能登半島に行ってきました(なんとなく、能登半島、日本海てコトバにひかれてね)。
が、出発当日。
夫婦「誰か、運転して。」
私 「カーナビって、自動運転になんない?」
夫 「ドイツ人、それやらない。」
イミフ・・・。
目指すは、和倉温泉。
富山県に入ったら、がぜん盛り上がる。広ーい。田んぼの中にこんもりと、神社みたいに防風林で囲まれた黒い瓦の家。わーっ、これが裏日本か(浅い見解・・・)。つか、なんで屋根みんな黒いの? 集合住宅すら、瓦が黒くて、つやつや。それは、屋根に積もった雪が早く解けてすべり落ちやすいからだそう。ちなみに、島根瓦は赤いと聞いた。地域によって、土の色がちがうから、瓦の色も変わるんだろうな。
1370年から1529年にかけて建造された聖ヤン大聖堂。
ここから3分のところに滞在していました
ふと、昨年(2011)アーティスト・イン・レジデンスで3ヶ月間滞在したオランダのことを思った。私は大きな石膏型を使う仕事をしていて、いちいち3人男手を頼まないと移動すらできないことに、うんざりしていた。
手伝ってくれたディエゴと教会の横にあるカフェで休憩をしていたとき、
「大きな作品は、もう作りたくない。土に向かないし、あんなの、作家の自己満足だよ」すると、彼は「あの教会、見ろよ。あれ、土でできてんじゃん。」わっ、そうだ。通りも家も、教会も、みんなレンガでできている。ちいさなレンガを積みあげて、大きなものを作ってる。
レンガ工場見学へ行くことにした。もうあと5日で日本へ帰国するという11月21日のこと。午前9時半に、Steenfabriek Biezeveld社のバーガー氏が私の滞在していたヨーロピアンセラミックワークセンターへ迎えに来てくれた。粘土の採掘場へ向かう。ドイツからライン川、フランスからマース川が流れ込み、交差するあたり。海抜0m以下の土地もある平地のオランダでは川の流れが遅くなり、土の良い成分が川底に溜まる。だから、ローマン時代からレンガ作りが始まったそう。
(車中の会話は、こちら で聞けます→http://motoharareico.com/brick.html )
「原料の生産者、地球?がっはっはぁー」
レンガ工場へ着くと、「そのまんまじゃ、使えないんだ。」と採掘した粘土は、外に放置してあった。 「こっちの山はね、赤い方。こっちのはね、ちょっと黄色い土。注文に合わせて、色混ぜんの。」(テキトー・・・。)確かに雨が降れば、ナトリウムとか余分な成分が流されて、自然に土濃しされる。外で寝かせてるわけね、ふむ。
いよいよ、煉瓦作りの現場へ。なんと!木の型で、手作り!しかも一人(爆笑)。「1日に何個作れるんですか?」「300くらいかな」土、締めないんだ・・・。
「この国はね、200年前、300年前、500年前に造られた教会もあるから。修理には、うちのレンガじゃないとダメなの。」あー、そうだよね。工業生産の画一化されたレンガじゃ、合わないワ。
「日本も土が採れるけど、レンガの家はないよ。」
「この国は、地震がないから。ラッキーだ。」
土は、ほんとにその社会や文化を反映してる、まいったな。この工場見学のことをオランダ人に話すと、土がすぐそこで採れてること、ほとんどの人が知らなかった。
よそ者だから見えるコトってある。
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◆ほかの回のコラムを読む
第1回 ベルギー・オランダ、ビールの旅
第2回 おそれ入ります、お庭ちゃん。
第3回 今さらながら、自己紹介
第4回 土がわたしにくれたもの
第5回 よそもの視点、旅人目線
第6回 すべてのわざには時がある
第7回 『100gのキモチ』 (最終回)
Posted by eしずおかコラム at 12:00